皮膚の良性腫瘍
皮膚の良性腫瘍
皮膚科形成外科の日常診療でしばしば見られるのが、皮膚もしくは皮下の良性腫瘍です。これは皮膚そのものや皮下の脂肪組織にできる良性のできもののことです。基本的には増殖が緩やかで、転移することなく、臓器や生命に重大な影響を及ぼすことのない腫瘍です。腫瘍と聞くと“癌”をイメージする方も多いと思います。しかし、腫瘍には良性と悪性があり、悪性腫瘍(正確に言えば上皮性悪性腫瘍)のことを癌と言います。
身体にできる皮膚・皮下の良性腫瘍で多いのは母斑(いわゆるほくろ)、粉瘤、脂肪腫、石灰化上皮腫などです。これらの疾患は良性疾患ですので、手術で摘出せずに様子を見て行くことも可能ですが、少しずつ大きくなることが多いので、取るのであれば早めがお勧めです。これは、できものが小さければ小さいほど手術の傷が小さく済むからです。また、まれにですが良性腫瘍が悪性化することもあります。ですので、少しでも気になった時に手術で摘出してしまうのがお勧めです。
いわゆるホクロです。生まれつきのものが多いですが、年齢があがると色や形が変化することもあります。後に色が濃くなってきたり、後から現れてくるものもあります。
黒いもの(色素性母斑)や表面がでこぼこしたもの(脂腺母斑や表皮母斑)などがあります。
通常は良性ですが、まれに悪性のことがあるので注意が必要です。ダーモスコピーという特殊な器具で覗くことである程度診断は可能ですが、それでも良性悪性の鑑別が難しい場合があります。その際は、腫瘍の一部を検査に出して調べることもあります(生検)。非常に大きな母斑の場合は2回に分けて切除することがあります(分割切除)。また、顔の母斑などで切除した後にひきつれを生じる場合は、局所皮弁術という方法を用いてひきつれを予防することもあります。
良性の皮下腫瘍で、表皮嚢腫、アテローム、アテローマとも呼ばれます。
皮膚の下に袋状のものができ、皮膚からの垢や脂などの老廃物が溜まって徐々に膨らんできます。顔、首、背中など身体中のどこにでもできます。大きさは数mmから数cmの半球状で、中央に穴があり、強く圧迫すると、臭くてドロドロした粥状のものがでてきます。粉瘤そのものは痛みなどを伴いませんし、癌化することもなく、気にならなければ経過をみることも可能ですが、時に袋内の老廃物が異物反応を引き起こし、表面が赤くなり全体が大きく膨れ上がり、痛みを伴うことがあります。この場合、表面を切開して内容物を外に出してあげる必要があります。こうなると、創部がおちつくまで手術で摘出することはできません。数ヶ月後に炎症が落ち着いたのを見計らって摘出することになります。
良性の皮下腫瘍で、皮下組織(脂肪層)に見られます。深いものだと筋肉の中に入っていたり、骨の膜の下に潜り込んでいたりします。背部、肩、首の後ろなど身体中のどこにでもできます。通常、痛みなどの症状はありませんが、筋肉の膜である筋膜に癒着していたりすると痛みを生じる場合もあります。皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして認められます。大きさは数ミリ程度の小さなものから直径が10センチ以上に及ぶものまで様々です。自然に消失することはなく、基本的には徐々に大きくなっていきます。大きくなると局所麻酔の手術では対応できなくなってしまうので早めに治療をされることをおすすめします。
石灰化上皮腫とはその名の通り皮膚の一部が石灰のように硬くなる良性の皮下腫瘍の一つです。毛母腫という別名もあります。比較的若い人、特に小児の顔、腕、首などに発生することが多いです。中学生未満の場合、局所麻酔での手術が難しいので、他施設に紹介させていただきます。
いずれの腫瘍も局所麻酔での日帰り手術が可能です。
母斑や粉瘤、石灰化上皮腫は腫瘍が皮膚とくっついているため皮膚を一緒にとらないといけません。そのため、くっついている部分を中心として皮膚を木の葉状に切ります。脂肪腫の場合は皮膚をとる必要はないので、腫瘍の真上を一直線に切ります。腫瘍を丁寧に周りから剥がし一塊に摘出します。しっかりと止血をしてから深い部分と浅い部分を2層に分けてしっかりと縫います。
キズあとを目立ちにくくする工夫として、縫い合わせた線と皮膚のシワの線が一致するようにします。
粉瘤に対してはくりぬき法というキズあとが小さくなる方法を選択することもできます。しかしこの方法ですと、キズが小さい代わりに腫瘍を取り残したり、止血が十分にできず術後に出血する可能性もあります。くりぬき法をご希望の方はまずはご相談ください。
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