アトピー性皮膚炎の治療の目標は、日常生活に支障がないレベルの症状で薬物療法もあまり必要としない状態を維持することです(寛解状態)。
基本的な治療は①炎症の制御②スキンケア③補助療法になります。
アトピー皮膚炎
アトピー皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。
アトピー性皮膚炎では、皮膚の“バリア機能”(外界のさまざまな刺激、乾燥などから体の内部を保護する機能)が低下します。そのため、外から抗原や刺激が入りやすくなっており炎症を起こしやすくなっています。また、”アトピー素因”とよばれるアレルギー体質を持っていることでアレルギー症状を起こしやすくなっています。アトピー素因を持つ方はアトピー性皮膚炎の他にも、気管支喘息や花粉症などのアレルギー疾患を発症する確率が高いと言われています。
ダニやほこり、動物の毛、温度や湿度、飲酒、ストレスなど様々な要因が皮膚炎の悪化を引き起こす原因となります。
顔、頸部、手足の曲げる部分(肘の内側、膝の裏)などにかゆみを伴う皮疹が出現します。多くは左右対称性です。かゆみが強くなり皮膚を引っ掻くことでさらに皮膚が薄くなりさらにかゆみが悪化するという悪循環になります。まぶたがかゆくなって目をこすりすぎると白内障や網膜剥離になることもあるので注意が必要です。
乳児期、幼小児期、思春期、成人期など年齢により症状のでる部位がかわります。乳児では頭や顔から皮疹が始まり徐々に手足の方に広がっていきます。幼小児期では首や手足の関節部分を中心に、思春期以降では顔や首、胸などの上半身に皮疹が強くでます。
アトピー性皮膚炎に合併しやすい皮膚症状としては伝染性膿痂疹(とびひ)、伝染性軟属腫(みずいぼ)、カポジ水痘様発疹症といったものがあります。
アレルギー性皮膚炎は特徴的な皮疹なので、見た目や皮膚を触った感触で診断をつけることができます。独特のざらざらした乾燥肌も特徴です。
血液検査では総IgE値、好酸球数、TARC値が上昇します。
あくまで診断は症状と経過によってなされるので、検査の主な目的は病勢の把握になります。
アトピー性皮膚炎の治療の目標は、日常生活に支障がないレベルの症状で薬物療法もあまり必要としない状態を維持することです(寛解状態)。
基本的な治療は①炎症の制御②スキンケア③補助療法になります。
炎症制御の基本です。病変や部位、年齢によりステロイドの強さの使い分けを行います。ステロイドは適切に使用すれば全身的な副作用は少なく、安全性の高い薬です。強いステロイドを長期間使用すると皮膚が萎縮して薄くなるなどの副作用がでるので注意が必要です。
炎症をおさえる効果が高い外用薬です。ミディアム〜ストロングクラスのステロイド外用薬と同程度の抗炎症効果があると言われています。ステロイドのような副作用がほとんどなく長期間使用できます。顔や首に使うこともできます。副作用としてほてりやヒリヒリ感といったような灼熱感がありますが、徐々に改善することが多いです。正常な皮膚からは吸収されないといった特徴があります。
2歳から使用できます。
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬という新しい機序の薬です。ステロイドとは違い皮膚萎縮はほとんどなく、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)のような灼熱感もありません。ただし、皮膚感染症に弱いので、毛包炎や尋常性ざ瘡(ニキビ)ができることがあります。
生後6ヶ月から使用できます。
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬という新しい機序の薬です。ステロイドとは違い皮膚萎縮はほとんどなく、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)のような灼熱感もありません。色素沈着の副作用がありますがごくわずかです。
生後3ヶ月から使用できます。
紫外線の中のUVBのうち、特に治療効果の高い範囲の波長だけを照射する治療法です。塗り薬が届かないような皮膚の深い部分にまで波長が届くので治療効果が高いです。痛みもなく、治療時間も数十秒と短いです。
従来の治療でコントロールが難しいアトピー性皮膚炎の方に対して様々な薬が登場しています。
アトピー性皮膚炎には毎日のスキンケアが欠かせません。皮膚を清潔に保つために毎日入浴しましょう。ただし、体を洗う際はナイロンタオルの使用は厳禁です。泡立てた石鹸を使い手のひらで洗うようにしましょう。洗った後は十分にすすいでください。水分を拭き取る時もこすらずに押し当てるようにして拭くようにしましょう。
保湿も非常に大切です。ヘパリン類似物質やワセリンなどを使用しますが、症状や部位や時期によって使い分けが必要になります。自分に合った保湿剤をみつけて使用するようにしてください。入浴後すぐに使用することで保湿効果は高まります。ヘパリン類似物質には血管拡張作用があるので、場合によっては赤みが増したり、かゆみが増したりすることもあります。その時はワセリンを使用することも考えてみてください。
かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬を内服します。抗ヒスタミン薬には色々な種類があり、効果や作用時間、副作用などもまちまちです。眠くなったり、ふらつきが出る薬もあるので、車の運転をされる方や仕事で高所に上る方にはそのような薬は処方できません。
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