湿疹
湿疹
湿疹(しっしん)は、炎症により痒みを伴う多様な皮疹(皮膚のぶつぶつ)が体にできる病気です。皮膚のトラブルの中では最もよくみられ、皮膚科を受診される方の中で最もたくさん見られる皮膚疾患です。皮膚科を受診される患者さんの約3割は湿疹であるという統計もあります。最初は軽微な皮疹でも、掻いているうちに急速に悪化する場合も多く、少し治りが悪いと感じた場合は早めに受診されることをおすすめします。
湿疹の原因として、外的因子と内的因子が絡み合って発症すると考えられます。外的因子とは皮膚表面に接触する何らかの外的異物や外的刺激のことであり、ハウスダスト、植物、金属、食物、ダニ、細菌、真菌、薬剤、化学物質などが含まれます。厳密には日常生活で接触するすべてのものが外的因子となりうる可能性があります。内的因子には、アトピー素因(アレルギー疾患を発症しやすい体質)、皮膚バリア機能の低下、ストレスなどがあります。これらの外的因子が皮膚の毛穴などから皮膚内部に侵入し、かつ内的因子が関与することで異物を排除しようとする炎症反応が起こりますが、これが湿疹反応として症状が現れることになります。
肌が刺激となる物質に触れることで起こる湿疹のことです。
金属製品や化粧品、洗剤や植物との接触などが原因となりその接触部位に一致して皮疹が出現します。
コロナ流行以降、マスクやゴム手袋、消毒薬などが原因の接触皮膚炎が増えています。
治療には原因物質の除去が必要ですが、原因がわからないことも多いです。パッチテスト(貼付試験)と呼ばれる診断方法で原因物質の特定ができることもあります。
固有の病名のある接触皮膚炎には以下のようなものがあります。
アトピー性皮膚炎も湿疹の一種です。詳しくはアトピー性皮膚炎の項目をご覧ください。
頭や顔など皮脂の分泌が盛んな部位にできる湿疹です。乳児型と成人型があり、乳児型は1歳までに自然軽快します。成人型は長く反復することが多いです。皮膚が赤くなり、湿り気のあるフケや乾燥したウロコ状のフケがボロボロと出てきます。マラセチアという真菌の一種が関与していると考えられているので抗真菌薬の外用薬を使用することが多いです。また、皮脂の分泌を抑えるために生活習慣の改善が必要になります。
主に膝下にできる湿疹で、境界のはっきりした1〜5cm大の円形であることが多いです。患部がコインのような形状をしているのが特徴で、強いかゆみを伴います。かきむしることで悪化し、全身に皮疹が広がる自家感作性皮膚炎を続発することもあります。
ある部位に限局していた湿疹が悪化するとともに、全身に細かい皮疹が広がって、強いかゆみを伴います。最初の病変を“原発巣”といい、下腿によくみられます。また、その後広がってきた細かい皮疹を“散布疹”または“id疹”といいます。重症の場合は、発熱などの全身症状がでることもあります。この現象は「id反応」と言われ、原発巣の掻きこわしなどによって生じた細菌などが抗原となりアレルギー反応が生じ、血行性や掻破により他の部位に広がり、全身性に症状が出現すると考えられています。
下肢静脈瘤などの慢性的疾患がある時に、下腿を中心に湿疹や褐色調の色素沈着がみられます。これが慢性化して長く続くと、皮膚が浮腫状に硬くなったり(硬化性脂肪織炎)や、熱感をもって痛みを伴う(うっ滞性脂肪織炎)を起こすこともあります。また、皮膚のバリア機能も低下し、ちょっとした外傷で深い傷になったり、塗り薬でかぶれたりしやすくなります。立ち仕事をする人や肥満の人に多いです。
加齢や入浴時の洗いすぎなどが原因で皮膚が乾燥しやすくなり、かさかさしてくると、皮膚のバリア機能が低下して、さまざまな外的刺激により湿疹が生じやすくなります。主に高齢者の下腿にみられます。
手のひらや足底に小さい水ぶくれ(小水疱)が多発して、強いかゆみを伴います。多汗症の人にみられる傾向がありますが、汗腺との関係ははっきりしていません。金属アレルギーなどが原因のこともありますが、はっきりとした原因がわからない場合も多くみられます。異汗性湿疹ともいいます。
このように湿疹のバリエーションは非常に多く、臨床症状も多彩ですが、起こっている共通の病因は皮膚表面の表皮内における炎症反応です。これに対してはステロイドの外用薬を使用します。かゆみが強い場合は抗アレルギー薬も併せて使用します。原因がある程度わかっているものに関しては原因物質の除去が最優先です。さらに、生活習慣に関わるものも多いので、その見直しが必要なことも多いです。
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