けがによってできる傷には色々な種類があります。傷に対する処置は、部位、深さ、大きさ、汚染の程度、けがしてからの時間などにより異なります。また、けがの仕方により以下のように分けられます。
- 切創(切り傷)
- 擦過傷(擦り傷)
- 挫創・挫滅創(ぶつけて切れた傷)
- 刺創(刺し傷)
- 咬傷(咬み傷)
けがは縫合できる時間(Golden hour)が決まっています。顔や頭であればけがをしてから24時間以内、からだや手足であればおおむね6〜12時間と言われています。傷がきれいに治るためには初期治療がとても重要ですので、速やかに形成外科のある医療施設の受診をお勧めします。
けがをした場合は、傷をガーゼ等で保護し、ガーゼの上から圧迫、心臓より高い位置に傷を挙上しつつ、できるだけ早く最寄りの形成外科を受診してください。傷に絆創膏を貼るのは問題ありませんが、最近流行りの傷が早く治る絆創膏を容易に使用するのは非常に危険です。使い方を誤ると感染症を起こし傷の治りを妨げることがあるので専門医のアドバイスをもらうことをお勧めします。
切創(切り傷)
ガラス片や刃物など鋭利なもので切れたいわゆる切り傷です。手足の切創においては、比較的浅い層を走行する神経、血管、腱などの損傷を伴いやすく、早期にそれらの損傷の有無を確認し、適切な処置を受ける必要があります。また顔面の切創においても、顔面神経、涙小管、耳下腺管などの損傷を伴う場合があり、形成外科的専門治療が必要となる場合があります。また、「包丁やスライサーで切ってしまった」など指先の皮膚を削いでしまった場合は、その皮膚片をお持ちいただければ縫い合わせることが可能です(状況に応じて困難な場合もあります)。
擦過傷(すり傷)
道路のアスファルトや塀などにこすりつけることにより、皮膚が擦りむけた傷です。浅い傷であることが多いので、縫合せずに治ることがほとんどです。しかし、傷の中に小さな砂やゴミなどが入り、治ったあとも皮膚の中に残ってしまう場合があります。この状態を「外傷性刺青」と言いますが、これを防ぐためには受傷後早期に創部の十分な洗浄・ブラッシングを行い、細かな異物を除去しておくことが大切です。すり傷は初期治療が重要となります。
挫創・挫滅創(ぶつけて切れた傷)
硬い地面にぶつけたりして生じる傷であり、切創に比べて創周囲の損傷が高度なことが特徴です。損傷の程度により、治癒に時間がかかることがあり、時に傷んだ組織を切除して縫合する場合もあります。また、創の汚染を伴っていることも多く、その場合はその後の感染の危険性も高くなり傷の治りにも影響するため、初期治療時に十分な洗浄を行う必要があります。顔面の挫創では骨折を伴っている場合もあるので注意深く診察する必要があります。鼻骨骨折や頬骨骨折などの顔面骨骨折は、けがして2週間以内に手術が必要になるので、受傷後すぐに専門医を受診することをお勧めします。
刺創(刺しキズ)
刃物や釘のような先端が鋭利な器具が突き刺さって生じる創で、創口が小さくても奥行きが深いのが特徴です。異物が残っている場合には摘出が必要です。また深部におよんだ場合には血管損傷や神経損傷、さらには重要な臓器損傷の可能性があります。
咬傷(咬みキズ)
動物(ヒトを含む)に咬まれた後に生ずる創傷で、歯型に合致した創口の形態が特徴的です。歯牙に付着している雑菌が組織内に押し込められることにより、受傷後感染の頻度が非常に高いです。この状態で傷を縫ってしまうと、細菌を傷の中に閉じ込めてしまうことになるので、基本的には縫合は行いません。十分な洗浄と軟膏塗布、抗生剤内服で経過を見ていくことが多いです。周囲に感染が広がるようであれば抗生剤の点滴を行うこともあります。